蓮沼 桜雲(はすぬま おううん)さん
横浜市在住。3児の父。これまでに2度の育休(1年6カ月)を取得。本業はキャリアアドバイザーとライフコーチを行いながら、NPO法人全日本育児普及協会の認定講師としてパパ向け講座の講師活動も行う。外遊びが大好きで、横浜市内のプレイパークがお気に入り。
私はこれまで2回の育休を取得し、累計期間は1年6カ月となります。今考えると「育休を取得する」という決断は本当に素晴らしい日々を与えてくれましたが、取得を決意するまでや取得直後は葛藤の連続でした。私の当時を振り返り、リアルな感想をこの場を借りて共有したいと思います。
今回はよりハードルの高かった1回目の育児休業取得時の心情や経緯、そして復帰後の内容を中心にお伝えいたします。
私が育児休業(以下育休)を取得したいと思ったきっかけは他の皆さんと異なるかもしれません。
2018年に結婚し、2019年に第一子が誕生した我が家はとにかく慌ただしい日々が続いておりました。その中でも私の意識は仕事に向いており、「生まれてきてくれた子どものためにも仕事で成果を出して、稼がなければ!」と仕事に全力な日々を過ごしておりました。
対個人向けの仕事をしていることもあり、平日の夜や土日に仕事が入ることも多く、帰宅は23時頃。妻と子どもと顔を合わせるのは朝の時間と休日のみという状況でした。
自分なりに一生懸命な日常を過ごしていたある日のこと、いつも通り深夜に帰宅をすると、妻がいつもと違う様子で辛そうに授乳をしている姿を目の当たりにしました。夜泣きがひどかった長女の影響もあって眠れない日々が半年以上続き、日中も自宅でなれない育児に一人で向き合っていた妻。精神的にも肉体的にもぼろぼろになっていました。
私も自分なりに全力で仕事をして、妻も全力で育児をしてくれている。だけどどこかボタンを掛け違えた気がしてならなかったので、妻と二人でしっかりと話し合う時間をとりました。妻が私に何を求めているのか、じっくりと対話をする中で「共に過ごす時間」を彼女が求めてくれていたと知りました。その日からできる範囲で仕事は早く上がり、仕事での成果以上に家族との時間を今は優先しようと決意し、行動を起こしました。
そうする日常が続く中で第二子を授かり、最大限時間をともにするために育児休業を決意しました。
育休を取ろうという決意は早々にできたものの、社内の身近な方に男性育休の取得経験者はおらず、会社の人事に連絡をして数年前に取得をされた先輩社員を紹介してもらいました。私の当時の悩みは「育休をどれだけ取得するか」という期間のこと。育休制度については理解をしていましたが、給与が大幅に減ること(妻は専業主婦のため収入は私のみ)、休職期間が増えることで出世が遅れること、などキャリアとお金に関する悩みは尽きません。私の中では1か月~2か月くらいの育休が取得できればと考えていた矢先にその先輩社員とお話しする機会をいただきました。
その際に今の悩みを話したところ、「蓮沼君、育休はね、人生でもしかしたらこれが最後かもしれない特別な期間なんだよ。そして先に伝えておくけど全然休みではないからね。
仕事をしていた方が楽かもしれないって思うほど育児のリアルは想像を絶するよ。奥様と感覚を共有する素晴らしい機会になるはずだから私は最低でも半年取得を強くお勧めする。僕の場合はね、最初の3か月はどうしてもお手伝い感覚が抜けなかったんだ。当事者意識がわいたのって4カ月目くらいからだったと思う。人によると思うから参考にしてね」
とまさかの長期取得のアドバイス。ただ先輩社員の言葉が胸に刺さり、妻と上司に相談し、生活費は貯金も切り崩しながら、出世は少し遅らせてでも今この瞬間を大切にする決断をしました。第二子出産の2カ月前に半年育休取得の決断をしました。
初めての本格的な育児、そして妻と24時間ともに過ごす日々の中で、我が家は夫婦喧嘩が絶えませんでした。些細なことや子育てのやり方の違いで衝突することもしばしばでしたが、3か月が過ぎるころにはその溝も埋まり、お互いがお互いを尊重できるようになりました。なにより「育児ってこんなに大変!」と私が身をもって経験できたことが大きな価値となりました。ママじゃないとできないことだと思っていたことが基本的にはパパでも努力次第で出来るんだと学びます。(授乳以外は全部できるよね、という妻からのプレッシャーもあり。ただ最後まで寝かしつけはできませんでした・・・)
色々と大変なことは多かったですが、本当に貴重な経験が出来た育休期間でした。
半年間の休業期間が終わり、いざ職場に復帰する際、ありがたいことに育児休業を取得したことを忘れるくらいのミッションをすぐに与えていただくことが出来ました。久々の業務に戸惑いも多かったですがなによりその期待がうれしかったのを覚えています。
また、育休取得中に上司と定期的にコンタクトを取り、日常のシェアをしていたことや復帰後はこのように働きたいという要望を伝えていたこともスムーズな立ち上がりに寄与していたように感じました。
ただ、育休が明けたからと言って元の働き方になってしまっては元も子もないので、妻と定期的に話し合う機会を持ちながら「この日は早く上がる日」「朝ごはんは早めに起きて私が作る」「在宅の日は隙間時間で家事をしてくこと」など役割分担をしながら少しでも夫婦が気持ちよく過ごせる工夫をしていきました。
長くはなりましたが育休取得の際のパパならではの葛藤を理解してくれる方はまだ多くはないかもしれません。ただ私は「この期間は人生において本当にかけがえのない宝物のような時間だった」と断言して言えます。ぜひ一人でも多くのパパが育休取得をできる世の中になってほしいと願っております。
また1回目の育休の経験があったからこそ、もし3人目が出来た時には、前回より長期の1年という期間で取得をしようと思えました。2回目の育休は業務の引継ぎや立ち上がりのイメージがわいていたので取得の際もスムーズでしたし、育休中の役割分担も1度経験があったからこそ揉めることなくできました。2回目の育休生活はスムーズに進みすぎていた分、本当にあっという間の時間でした。少しでも参考になれば幸いです。