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パパとママの心の悩み

初めてパパになったことで、うれしい反面、赤ちゃんとの接し方やママになった妻との関係など悩みも出てきて、ドキドキしたりオロオロしたりしていませんか。自らも5人の子どものパパという、保健師の森 猛(もり たけし)さんに、出産・育児期の、パパとママの心にまつわる疑問や悩みについて聞きました。

保健師さんに聞く、パパとママの心に関する疑問や悩み

妻の産後の「うつ」ってどんな状態ですか。

人によって違いますが、色々な症状が出ます。まずは不眠。その結果イライラが起こります。

今まで普通にしてきた家事などが、慣れない育児に手間や時間がかかるため、後手後手になってしまいます。そこからくる心の焦りが、原因のひとつではないかと言われています。何事に対しても「こうでなければいけない」という思いが募って症状が進み、うつ状態になると言われています。

症状としては、気分が落ち込んだり、不安が心を占めるようになります。そうなると、子どもをかわいいと思えなくなったり、憤りや怒りで心がいっぱいになります。重症になると、育児放棄につながる恐れもあり、そうなると大変です。

早めに気づいてあげたいのですが…。

それにはやはり、妻と会話することにつきます。

「大丈夫?」とか「元気ない?」などの小さな気づかいや声かけが大切です。

今日1日どんなふうに、どんな気持ちで過ごしたかを聞いてあげることが大事です。方法としては、「今日、何してたの?」とまずは声をかけて具体的な話を聞きます。その中で例えば、「ご飯が作れない」と言ったら「ぼくが作ろうか?」など、家事を代わる提案をします。具体的な話なら返しやすいですね。

他の人の気持ちや心の変化に気づくのが苦手な人は、つい的を射ない助言や反論をして、妻をさらにイライラさせてしまうことがあると思いますが、具体的なことを、その時の気持ちなどを含めて、とにかくよく話を聞くことです。そして妻の心を受け容れ、共感するように心がけましょう。

つけ加えるならば、地域とのつながりはとても強い味方です。マタニティクラスや赤ちゃん教室などに夫婦で一緒に参加して、地域のつながりを作るなど、妻が孤独にならないようにしましょう。

すでに妻のイライラが始まっているようなんですが…。

妻がイライラしているときは、「ひとりの時間」を作ってあげてみてはどうでしょうか。愛する我が子でも、24時間一緒にいると「ひとりの時間が欲しい」という気持ちになります。赤ちゃんから離れて、少しでもひとりになる時間を作ってあげると、自分の時間を過ごすことができて、妻の気持ちも休まることでしょう。

『パパノミカタ』の“ママとのコミュニケーション”にも掲載されているように、出産直後の母親の目は、すべて赤ちゃんに注がれています。夫への愛情が急降下するのは、仕方ないことなんです。

「会話をする」というのはイライラが始まる前の手段です。すでにイライラしている時は会話をする余裕はありません。そのような時は、夫は何も言わずに、いつも妻がやっていたことを思い出しながら、できることから少しずつやってみましょう。

家事なら掃除や洗濯、食器洗い。赤ちゃんに関わることなら、オムツ替えや、お風呂、寝かしつけなど。ミルクで授乳もできますね。

夫が家事や育児をしてくれれば、妻にもゆっくりする時間ができて、ちょっと横になったり、お茶を飲んだりしながら、少し冷静に考えられるようになります。そうなったらチャンス! そっと一言「いつもありがとう」と、感謝の言葉でねぎらってください。自然とコミュニケーションを取ることができます。


育児も家事も、頑張っているつもりですが、妻のようにはできません。本当のところ、何をしていいのか分からなくなってしまいました。

焦らずに、できることからで大丈夫です。

子どもが生まれたからといって、誰もがいきなり育児や家事が上手にできるとは限りません。初めてのことばかりなので完璧にできなくても仕方がないです。

まず、普段妻が何をしているかよく観察して、自分ができることからやってみます。不器用でも努力していれば、妻はちゃんと見ていてくれますよ。オムツ交換、入浴、掃除、食器洗いなど何でも良いですから、妻に教えてもらいながらやってみましょう。


自分の時間が持てなくて、ストレスが発散できません。自分の時間を持つには?

自分が好きに使えていた時間がなくなって、今までのストレス発散方法が使えなくなってしまったということですね。

少し発想を転換して、この機会に夫婦の共通の趣味やストレス発散方法を話し合ってみるのはいかがでしょう?

それでも、夫だけの時間、妻だけの時間もやはり必要です。中長期的にスケジュールを見据えて、「1か月頑張ったら1人で出かけてもいい?」という話をしてみるのも良いかもしれません。

また、新生児期は育児にかかりきりになりますが、半年経つと子どもの反応も変わってきます。それによって父親の役割が見えてくることもあり、自分らしい時間が持てるようになると思います。

ストレス発散方法と言えば、私は赤ちゃんの香りを嗅ぐと落ち着くんです。ちょっと変ですかね?(笑) 赤ちゃんの香りは、脳科学的にも良い影響があるようです。


一時預かりを利用して、妻と2人の時間も持ちたいのですが、妻が「他人に預けるのは嫌!」と言います。

妻が、子どもを他人に預けることの何を問題と感じているのか、聞いてみてください。妻なりに一時預かりを利用したくない理由があるはずです。

集団生活に入ると、感染症にかかりやすくなるなどリスクがある一方、月齢の近い子ども同士で保育を受けることで、精神発達の促進や社交能力の向上などが期待できます。

親子で一緒に、実際に子育て支援センターに行ってみてはいかがでしょう。保育士や保健師が相談に乗ってくれますし、子どもに合った子育て支援事業を紹介してくれます。集団で我が子が遊ぶ姿を見ながら、不安に思うことを専門家に相談してみてください。

妻と2人の時間を持つことを前面に出すことよりも、まずは、子どもに対する妻の思いを聞いてみましょう。


妻は育児に熱中し、私のことはそっちのけ。子どもはかわいいのですが、少しは私のことも見てほしい!

出産後すぐは、妻は育児に集中する時期になるので、不満はたまって当然ですよね。

夫と妻と子どもを、三角関係として見るのではなく、夫婦がペアになって子どもをかわいがる、つまり夫と妻が同じ方向を向くのです。

育児に対して同じ価値観を持つと、夫婦の絆はより深まります。妻は子育てを一緒にしてくれる夫に安心感を抱き、夫と結婚して良かったと愛情を深めてくれることでしょう。あとは、妻が夫を振り向いてくれることをじっと待ちましょう。


育児について職場の理解を得られず、残業が多くて悩んでいます。妻の負担が大きいので、何とかしたいのですが。

私の職場は上司と同僚の理解があって働きやすいのですが、なかなか残業を減らせない現実があります。この問題を夫婦で解決しようとするのは難しいと思います。夫婦が疲弊すると、育児の満足感が得られなくなりますし、虐待のリスクが高まることもあります。

家事と仕事に育児が加わると、優先順位が変わってきます。夫婦で何を優先するか、誰かの助けが必要か、話し合ってみましょう。例えば実家に帰省して両親の助けを借りながら、時間の組み立てを考えてみることも一つの方法です。


仕事のストレスが多く、家に帰っても家事や育児で、夜眠れないことが多くなってきました。どこかに相談した方が良いでしょうか。

男性も女性と同じように、産後の環境の変化や、子育てに対する責任感、不安などから、精神的な症状が出ることがあります。最近では男性の産後うつのことを「パタニティーブルー」とも呼びます。

うつ状態になってしまっては、本人や家族は大変ですし、仕事にも影響が出てしまいます。早めに妻や仲の良い友達、同僚、上司など相談できる相手に話してみてください。

病院を受診する時間がない人は、自治体の保健センターなどに在籍している助産師や保健師等との電話相談を活用してみてください。状態に合わせて病院の紹介などをしてくれます。ひとりで抱え込まないことが大切です。


会社の帰りに友人と出かけると妻が怒ります。毎晩出かけるわけではないし、休日は妻を育児から解放して自分が担当しているのですが…。

実は森家も同じ問題で、何度も話し合っています。(笑)

質問の中の「妻を育児から解放して」とあるように、夫も妻も“育児をやってあげている”と心のどこかで思っていませんか?また、パートナーが担っている仕事や家事などを、当たり前だと考えていませんか? 特に男性は、会社帰りの食事の付き合いは仕方がない、平日の家事・育児は妻がやって当然などと決めつけていないでしょうか?

森家のルールを例としてお話ししましょう。それは簡単。具体的にどちらが何の家事・育児を担うか、夫婦で共通の優先順位を決めておくことです。実際は、夫である私は、平日の週2日、早く帰って家事・育児を担当します。それ以外の3日は、妻の担当です。

ところが、共働きの場合は、どちらかが急に残業をすることになると、これだけでは対応できません。そこで優先順位を共有しておきます。例えば、食事と歯磨き、寝かしつけは優先順位が高いこと、それ以外の食器洗い、掃除、洗濯、保育園の準備などは、後に回しても構わない(優先順位が低い)こととしておきます。夫が家事・育児の担当日に帰りが遅くなってしまう時は、代わって妻が優先順位の高いことを集中して行い、優先順位の低いことは、夫が帰宅後にすれば良いとしています。

何もかもやろうとすると、結局、子どもと接する時間が少なくなり、苛立ちが増えてしまいかねません。子どもと直接関わりが少ない家事などの優先順位を下げて後に回せば、自然と子どもと過ごす時間が増えます。

また、出かける日数をそれぞれ同じにしておけば、不満は減ります。妻もたまにはストレス発散したいでしょうからね! 余談ですが、森家の妻は今度有名なアーティストのライブに行くようです。僕のように外出しない分を貯金して、たっぷり発散してくるわけです。

ここでもポイントはよく話をすることですね。お互いのやっていることを評価して、ねぎらいや愛情を言葉にすることで、信頼関係が生まれます。家事や育児は大変ですが、心が満たされると少し余裕が出てきますよ!

森 猛(もり たけし)さん

神奈川県清川村保健福祉課 保健師 5人(女の子3人と男女の双子)のパパとして大活躍中。

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