現在子育て中のパパの皆さん、「地域子育て支援拠点」に行ったことはありますか?
「地域子育て支援拠点」とは、「地域子育て支援センター」や「子育てサロン」と呼ばれる施設で、子育て中の親子が気軽に集い、相互交流や子育ての不安・悩みを相談できる場です。
今回は、横浜市内で地域の子育てを支えてきた渡辺さんに、「地域子育て支援拠点」を通じたパパたちの交流について伺いました。
渡辺 ひとみ(わたなべ ひとみ)さん
特定非営利活動法人ちゅーりっぷ 理事長
1998年子育て情報発行のボランティア活動を始める。自身の子どもの成長とともに保育協力やリフレッシュ講座などの活動を行う。
2004年には横浜市補助事業「ちゅーりっぷカフェ」を自宅で開設、年間約2,000人が訪れる。2005年にNPO法人化。
現在は子育て支援拠点や小規模保育園を運営し、スタッフ70名と「子育てが楽しいと思える地域づくり」を目指す。
横浜市在住。
私の仕事は子育て支援。お子さんのいるご家庭が楽しく子育てができるようお手伝いをする仕事です。
子育て支援の中でも「父親の育児支援」をするようになって、かれこれ10年になりました。
はじまりは、私の法人が運営する「港南区地域子育て支援拠点はっち」 (以下、「はっち」)が2008年に開所した頃に遡ります。
当時は「イクメン」という言葉が浸透してきた時期。ママが笑顔で子育てをするにはパパの子育てを推進することが大切、という認識が徐々に広まり、子育て支援拠点においても夫婦での育児をサポートすることが重要となってきた頃でした。
そうした時代背景もあって、横浜市の子育て支援拠点である「はっち」でも「父親の育児支援」が求められたのですが、それまで平日にママと子どもにしか接していなかった私たちはとても困惑しました。
たとえば「はっち」にパパと赤ちゃんが遊びに来ていても、パパは他のパパに話しかけたりすることはほとんどありません。
ママ同士なら「お子さんは何か月ですか?」と声を掛け合ってあっという間に仲良くなり、帰るころには連絡先を交換していたりするのですが。
どうすればパパがお子さんと遊びに来てくれるのだろう…。
様々な試行錯誤を繰り返して、パパたちの支援に取り組んできました。
最初のパパイベント企画は、私たちが頭をひねって考えるよりも、パパに聞いてみたほうが早い、と「パパの座談会」を開催することにしました。
お子さんの子育てに関して知りたいこと、困っていること、親子でやってみたいイベントなど、ざっくばらんに意見出しをしてもらったところ、とても面白い意見が飛び出しました。
そこで、その意見を一つひとつ実現することから始めました。
実際に開催したイベントをいくつかご紹介します。
パパが赤ちゃんに食べさせようとしても、赤ちゃんは全く口を開けない…。なぜならパパは無表情で無言。
そこで、パパに「あ~ん」って言いながら食べさせてもらったら、なんと赤ちゃんも「あ~ん」と大きなお口を開けて大成功!楽しいお食事タイムになりました。
ママが外出して、パパと赤ちゃんでお留守番。そんな時、パパは「何かあったらどうしよう」「赤ちゃんとどのように過ごそうか」とお家の中でとても不安です。
そこで赤ちゃんとのスキンシップの方法や、遊び方を学ぶ講座を開催。
音楽をかけて抱っこしながらゆらゆらしたら、赤ちゃんがスヤスヤと寝付くのを経験してもらいました。
運動不足のパパから「ちょっとお腹が気になってきたので」という声があったので、「親子フィットネス講座」を開催しました。
赤ちゃんを抱っこしながら音楽に合わせて体を動かすエクササイズなど、お子さんと楽しみながらの筋トレは大好評!その話を聞いたママたちからも「私たちもやりたい!」と言われたほどでした。
それからも様々なイベントを実施しました。講座中は同じ悩みを持つパパ同士とても和み、楽しそうでした。
しかし、それだけでは「パパ友」になるまでには至らなかったと思います。
こうした取り組みを続けるうちに、「はっち」のパパイベントは「パパの座談会」で出されたアイディアを実現するという流れが定着して、さらにイベント当日はパパたちから運営の協力をいただけるようになりました。
「自分の企画を成功させたい!」
お手伝いに来てくれたパパたちからは、そんな気持ちが伝わってきました。
そして企画・運営に関わるパパたちを「はっちパパボラ」というグループにして活動できるよう、体制を整えました。
「はっちパパボラ」は原則として、来られるときだけ参加すればいい、というゆるい規則にして、多くのパパに気軽に登録してもらえるようにしました。
ちょうどその頃、横浜市派遣のコーディネーターと協働で「パパスクール」を開催することになったことも幸運でした。全5回を同じメンバーで受講する「パパスクール」は、引っ込み思案のパパ同士でも友達になれる良い機会となったようです。
修了時にはパパたちが連絡先を交換してつながりをつくった上に、「はっちパパボラ」の登録者もぐんと増えました。
この講座中のエピソードとしては、泣き止まない赤ちゃんに困っているパパのところへ「はっちパパボラ」のメンバーが駆けつけ、抱っこをして寝かしつけてくれるという場面がありました。何気ない父親同士の助け合いを見て、私はとてもうれしくなりました。
「はっち」では、毎年10月に港南スポーツセンターで「はっち祭」を開催しています。これは地域の子育てに関わる施設・団体と一緒に行う大きな催事で、入場者1,000人を超える地元で人気のイベントです。ここでも「はっちパパボラ」は毎年大活躍しています。
「大型絵本のよみきかせ」、「歌とお絵描きショー」、「子育て戦隊!育児レンジャーショー」、「おおきなかぶの劇」、「パパダンス」など。毎年企画を考えて練習を繰り返し、当日のステージで発表する「はっちパパボラ」は、子育て中のパパの存在を大きくアピールしてくれています。
これまで「はっちはママと子が行くところ」と思っていた来場者のパパにも、「はっち」が近い存在になっているのを感じます。
また、このような大イベントを成功に収め、感動を共有したパパたちは、当然ながら友達以上の関係となっていきます。
ホームパーティーをしたり、バーベキューやキャンプに行ったりと、お子さんが成長して「はっち」を卒業しても、家族ぐるみのお付き合いが続いているようです。
子育て中のパパのみなさん、毎日職場と自宅の往復だけでは人生もったいないと思いませんか。ぜひ、お子さんと行ける居場所を見つけ、気の合うパパと友達になりましょう。ママが仲良くしている家族と会って、お付き合いを始めるのもいいですね。
パパたちがつながると、家族同士で助け合ったり、休日に一緒に遊ぶことができるようになって、ママにとっても嬉しいこととなります。きっと、それまで夫婦だけでは大変だった子育てが格段に充実し、たくさんの良い思い出ができることでしょう。
そして、お子さんはパパの人生に輝きを与えてくれる存在であることに気づかされます。どうぞ、お子さんとの生活を、思う存分楽しんでください。
子育て支援拠点は、ママとパパとお子さんが楽しく過ごせるよう運営しています。もちろんパパたちがお客様にならないこと、「ここが自分の居場所である」と思えることを大切にしています。私たちの運営する「はっち」では「はっちパパボラ」が先導して、パパもリラックスできる居場所になるよう導いてくれました。そのおかげで最近土曜日にはイベントに関わらずパパとお子さんでの気軽な来館が多く見られるようになりました。
今や子育てはパパもママも一緒に行うものだという理解が広まり、各地の子育て支援拠点ではパパも楽しめるイベントが開催されていることと思います。ぜひ、お子さんと一緒に足を運んで、パパライフを満喫してください。私たちはそんなご家族を、いつでも応援しています。
横浜市港南区にある地域子育て支援拠点です
お住まいの地域の子育て支援拠点については、各市町村の窓口へお尋ねください。
また、インターネットで検索することもできます。