絵本をコミュニケーションツールとして活用した、パパと子どもが楽しい時間を過ごすヒントをご紹介します。
3人のお子さんの子育てをしてきた、西村 直人(にしむら なおと)さん。NPO法人えほんうた・あそびうたの代表として、また4人組の「パパ's絵本プロジェクト」のメンバーとして、絵本ライブの活動を続けています。
もともとミュージシャンとして活動をしていましたが、絵本ライブのお仕事が増え、いまでは年間100本くらいの絵本ライブを行っています。ライブを通して、たくさんのパパたちと出会い、交流を続けています。そんな絵本をよく知る西村パパに、絵本を通して子どもとふれあうポイントを教えていただきました。
まず、本を選ぶときには、パパ自身が好きと思える本を選ぶことがとても大切です。
もしかして、家の中にある絵本は、全部ママが選んだ本ではありませんか?
子どもとの絵本タイムで大事なのは、パパ自身が楽しんで読むということです。プロの料理と家庭料理が違うように、プロの読み聞かせとお家での絵本タイムは違い、ご家庭それぞれの味でいいのです。
ママに「あなたも、たまには本を読んであげてよ」と言われて、しぶしぶ読んでいませんか?
パパが好きな本、読みたい本を、楽しく読んであげることが、子どもにとってとても大切なのです。パパが楽しそうに、かっこよく絵本を読むと、子どもにとってはパパがヒーローや大人のモデルになります。
パパが自分の「好き」なことを楽しめるようになると、子どもの「好き」なことや「やりたい」ことも応援できるようになります。このことが、子どもの自立を促し、「自分の道は自分で選び、主体的に生きよう」というメッセージにもつながっていきます。
きむら だいすけ(作・絵) 岩崎書店
子ども達は「うんち」や「おしっこ」ネタの絵本が大好きです。大ウケしながらも、生命のつながり、命の大切さが伝えられる絵本です。絵もお話も科学的な裏付けがしっかりとしています。
スティーブ・ジェンキンズ(作) 佐藤 見果夢(訳) 評論社
びっくりサイズの動物や昆虫、そしてそのパーツが実物大で描かれていて、どれも大興奮!パパと見るのにぴったりな科学系絵本です。他にも乗り物、恐竜、妖怪など、パパの得意分野の図鑑、バイクが大好きなパパならバイクのカタログなどもおすすめです!
うさぎの子が言えるたったひとつの言葉は…「うんちっち」。ためになるとか、ならないとかではなくて、とにかく子どもとゲラゲラ笑いあえる絵本です。ママはそんな絵本を選ばない?そこでパパの出番です!
山下洋輔(文) 元永 定正(絵) 福音館書店
言葉であそぶ絵本。すごく小さな子どもも楽しめます。音(のような言葉)で楽しむ絵本なので、子どもと声を合わせて読んだり、交互に読んだりと、言葉のやりとりをするだけで楽しくなります。
マーシャ・ブラウン(絵) せた ていじ(訳) 福音館書店
魔物が出てくる民話絵本です。子どもを冒険に連れ出す役目を担うのはパパ。野太い声で読んであげると、とても迫力があります。このような怖ーいお話を読んだ後は、パパがぎゅ~っと大きく優しく抱きしめてあげてください。
民話絵本を残酷さを理由に選ばないという方、ハッピーな結末への改変版を選ぶ方もいるのですが、対極の優しさを知り、将来出会う不条理を越えていく力を身につけるためにも大変重要な絵本です。
まつおか たつひで(作) ポプラ社
絵本を読みながら、ときには絵本をおいて、ぴょーん と体遊びができる楽しい本です。成長に合わせて「たかいたかい」をしてあげたり、一緒にジャンプをしてみましょう!
かがくい ひろし(作) ブロンズ新社
だるまさんがゆらゆら揺れたり、転んだり。絵本に合わせて、ゆらゆらゆら~、どて!(お膝に抱えたまま一緒に転ぶ) ゆらゆらゆら~、びろーん!(お膝に抱っこしてからたかいたかいをする) ゆらゆらゆら~、にこ!(お膝に抱っこしてむぎゅ!)というような、パパならではのアクティブな体遊びもできます。
塚本 やすし(作) そうえん社
動物の特徴をまねて体操、体遊びをする絵本です。
ひよこたいそうは、おしりをふりふりする体操。フラミンゴたいそうは、片足立ちしてがまんくらべ。色々な動物の動きをパパと子どもで、どっちがおもしろくできるかな?
tupera tupera(作) えほんの杜
へびの飲み込んだものをシルエットから、想像する絵本です。クイズ系絵本は、子どもから会話を引き出せるので、お子さんとおしゃべりがたくさんできます。絵もオシャレであっと驚く展開に大人もびっくりです。
こにし えいこ(作) 福音館書店
これも丸いシルエットが何かを当てるクイズ絵本。ヒントを出したりしながら、たくさんおしゃべりできますね。
答えがわかった後も、子どもが何度もこの本を持ってきたら、その時はパパにほめてほしいんです。何度も「すごいぞっ!」っと言ってあげてください。
つちだ よしはる(絵) グランまま社
うまいヘタは関係なく、子どもとの幸せ時間を過ごすのに歌は最高です。親子で一緒に歌うとリラックスできるので、おやすみタイムにもおすすめです。子どもから早く解放されたい気持ちからの寝かしつけの道具ではなく、極上の幸せタイムの道具として活用できると素敵ですね。
当時はおふざけをしすぎて、妻から怒られることもありましたが、子育てを終えた後「パパが子ども目線で遊んでくれたのが一番よかった」と妻から言われました。(西村さん談)
市販のミニ楽器(カズーやスライドホイッスルなど)を揃えるのもいいですが、簡単な手作り楽器を、子どもと一緒に作ってみるのもいいですね。ペットボトルにビーズやお米、あずきを入れて作る「シェイカー」や、堅い木に穴をあけてネジを差しこむ「バードコール」なども楽しいです。ネジを回すと鳥の声が出るんですよ。図書館などで手作り楽器の本を探して、作ることから一緒に楽しみましょう。
長野 ヒデ子(作) 童心社
それぞれのおうちでお子さんが生まれた日のエピソードや歴史がある。そういうことを語るきっかけにもできる本です。
みつい ゆきこ(作) くぜ じゅんき(絵) グランまま社
断乳、卒乳がテーマではなく、赤ちゃんと過ごした時間を思い出せる絵本です。この絵本で涙するパパ、「今までわからなかった、ママの喜びや辛さに気づけた」というパパもいるんですよ。
このような本を読んだ後に、○○ちゃんが生まれてきた時には、「こんなことがあったんだよ」という話を何度も何度もしてあげてください。子どもが「自分がこの世の中に存在する確かさ」を強めることができて、自己肯定感を高めることができます。生きる力になっていくと思います。
今回は、色々なジャンルの絵本を紹介しました。絵本を選ぶヒントになりましたか?パパ自身が一番読みたい本を見つけて、お子さんとの時間を楽しんでください。
西村さんは、たくさんの絵本をスーツケースに入れて児童館にやって来てくれました。今回はその一部をご紹介しました。
西村さんはミュージシャンとして音楽の仕事をしていましたが、子どもが生まれてからは、「絵本ライブ」というかたちで絵本の楽しさを伝えています。今回の絵本は3人の子育てをしてきた西村パパの経験から、厳選して紹介していただきました。
書店や図書館にたくさん並ぶ絵本の中から、自分に合ったもの、パパが子どもに読んであげたい絵本を選ぶヒントにしてください。そしてパパ自身が楽しんで、絵本で幸せな時間を過ごしてください。